不動産売買擁壁の説明義務は?
擁壁についての説明がありません
先月、擁壁付土地の物件を契約しましたが、重要事項説明書に擁壁の状態を説明してありません、そして、売主さんは物件状況等報告書にも記載していません。
この件について、告知義務違反になることを教えていただきたいと思っております。
重要事項説明義務の項目
不動産の売買において、宅地建物取引業者が関与する場合売買契約締結時までに買主に対して重要事項説明を行う必要があります。
これは、宅地建物取引業法第35条に規定されています。
この規定には、買主に対して説明しなければいけない事項が明記されています。
まずは条文を引用します。
ーーーここからーーー
一 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
二 都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
三 当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項
四 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
五 当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
六 当該建物が建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項 に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項 に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
七 代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的
八 契約の解除に関する事項
九 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
十 第四十一条第一項に規定する手付金等を受領しようとする場合における同条又は第四十一条の二の規定による措置の概要
十一 支払金又は預り金(宅地建物取引業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭(第四十一条第一項又は第四十一条の二第一項の規定により保全の措置が講ぜられている手付金等を除く。)であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう。以下同じ。)を受領しようとする場合において、第六十四条の三第二項の規定による保証の措置その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十二 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
十三 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令
ーーーここまでーーー
以上の通り、宅地に擁壁があることを説明しないことで、即、宅建業法違反とはなりません。
そもそも、宅地に擁壁があることは、現地を見れば分かることでもあります。
問題は、その擁壁があることで建物の建築位置等に制限がある場合、擁壁がそのままの状態では利用できない場合です。
宅地建物取引業法では、重要事項説明の義務を定めた35条がありますが、これは最低限これだけは説明しなさい。という義務であって、35条に規定された事項の説明だけで十分ではありません。
同法の47条に「宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」を説明する義務があります。
建物を建て居住する目的でその土地を購入するという、購入目的を宅建業者に伝えていた場合、宅建業者はその土地に建物を建てる為に支障がある事項について、説明する義務があります。
例えば、擁壁が老朽化して再設置をしなければいけない可能性や、がけ地条例により安息角を保つために建物位置の制限を受ける場合です。
但し、宅建業者の調査義務は見た目で分かる範囲、役所の調査で判明する範囲に限られるという考えが基本にあります。
専門家に調査を依頼してみなければ判明しないようなもの、例えば地中を掘り返してみなければ判明しないようなものまでは調査義務はないとされています。
また、物件状況等報告書は法律的に発行しなければいけない書面ではありませんし、その書類にすべてを書くことは事実上不可能であると考えます。但し、擁壁なしと記載した場合は虚偽という事になると思います。
結論から言うと、擁壁があることを書かなかった事により、どのような損害、影響が発生したのか?により相手方の責任の有無、損害賠償の可否が変わってくると思われます。
この記事を書いた専門家
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(有)ライフステージ代表取締役
「不動産ワクチンいまなぜ必要か?」著者、FMさがみ不動産相談所コメンテーター、TBSひるおび出演、
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