登記簿の面積と実際の土地面積が違う?「縄伸び」「縄縮み」とは?
「土地を買ったら、登記簿に書いてある面積より実際の土地が広かった!」
「逆に、測ってみたら登記簿より狭かった…」
不動産、特に土地の取引をしていると、まれにこんな話を聞くことがあります。この現象、実は「縄伸び(なわのび)」や「縄縮み(なわちぢみ)」と呼ばれる、歴史的な背景を持つものなのです。
今回は、一般社団法人不動産相談協会のYouTubeチャンネル「不動産お悩み相談室」の動画「士業の楽屋シリーズ」から、土地家屋調査士の加納先生による「縄伸び・縄縮み」の解説を元に、その意味と背景、注意点などを分かりやすくご紹介します。
(動画元:一般社団法人 不動産相談協会 FUDOUSAN soudan)
動画でご覧になりたい方はこちらから
「縄伸び」「縄縮み」とは?
簡単に言うと、登記簿(土地の公式な記録)に記載されている地積(面積)と、実際に測量した土地の地積が異なる状態を指します。
- 縄伸び (Nawanobi):実際の地積 > 登記簿上の地積
(登記簿の面積よりも、実際の土地の方が広い状態) - 縄縮み (Nawachijimi):実際の地積 < 登記簿上の地積
(登記簿の面積よりも、実際の土地の方が狭い状態)
動画では主に「縄伸び」について解説されています。
なぜ「縄伸び」は起こるのか?【歴史的背景】
この現象の多くは、明治時代の「地租改正(ちそかいせい)」に起因すると言われています。
- 税金(地租)のため: 当時、土地の面積に応じて税金(地租)が課せられました。そのため、土地の所有者は、税金を安くするために、実際の面積よりも少なく申告する傾向がありました。
- 測量技術: 明治初期の測量技術は現代ほど精密ではありませんでした。測量には文字通り「縄」を使ったり、歩測(歩数で測る)が用いられたりしました。
- 意図的な過少申告?: 少なく申告したい所有者が、使う縄を少し伸ばしたり(縄が伸びる)、歩測の歩幅を大きくしたりして、測定結果を意図的に小さく見せた、という説があります。「縄伸び」という名前は、この「測量に使う縄が伸びていた(=実際より長く、測定結果が短くなる)」ことに由来すると考えられます。
- 登記の迅速化: 政府としても、全国の土地の登記簿を早く整備する必要があったため、多少の誤差には目をつぶって、申告された面積を登記したケースが多かったようです。
このような背景から、特に古い登記簿では、実際の面積よりも小さい地積が記録されている「縄伸び」の状態が残っていることがあるのです。
「縄伸び」「縄縮み」が問題になるのはどんな時?
普段、土地を持っているだけでは、登記簿との面積の違いが問題になることは少ないかもしれません。しかし、以下のような場合に表面化します。
- 土地の売買: 買主が正確な面積を知りたい、あるいは金融機関が融資の条件として正確な測量を求める場合など、確定測量を行う際に発覚します。
- 相続: 相続財産を正確に評価するため、あるいは遺産分割のために測量した際に判明することがあります。
- 建築: 家を建てる際などに、正確な敷地面積が必要となり、測量して発覚するケースもあります。
発覚したらどうなる?修正は必要?
「縄伸び」が発覚した場合、基本的には**地積更正登記(ちせきこうせいとうき)**を行い、登記簿の面積を実際の面積に修正する必要があります。
- メリット:
- 土地の正確な価値が明確になる。
- 売買などがスムーズに進む。
- デメリット:
- 固定資産税・都市計画税が上がる: 登記簿面積が増えるため、それに伴い税額も増加します。
- 測量・登記費用がかかる: 土地家屋調査士による測量や登記申請には費用(数十万円~)がかかります。
「縄縮み」の場合は逆で、税金は安くなる可能性がありますが、土地の評価額が下がることになります。
修正は義務?
国が自動的に「直しなさい」と命令することは通常ありません。しかし、売買の相手方から求められたり、将来的なトラブルを避けるために、発覚したタイミングで修正(地積更正登記)を行うのが一般的です。ただし、測量や登記の費用と、税金の増減額などを考慮して、すぐには修正しないという判断もありえます。
測量図の有効期限は?
過去に行った確定測量の図面(立会証明書などがあるもの)には、法的な有効期限はありません。しかし、境界標(境界を示す杭など)がなくなっていたり、移動していたりすると、その測量図の信頼性が揺らぐため、再度の確認や測量が必要になる場合があります。
どんな土地に多い?
- 古い登記がそのままの土地: 特に明治時代の地租改正時の測量が元になっている土地。
- 国土調査が入っていない地域: 国が主体となって行う比較的新しい測量(国土調査)が行われていない地域の土地。
- 地方や山林など: 都市部に比べ、測量が古いままの土地が多い傾向があります。
まとめ
「縄伸び」「縄縮み」は、登記簿上の面積と実際の面積が違うことを指し、特に明治時代の地租改正や当時の測量技術に由来する歴史的な問題です。
普段は問題なくても、土地の売買や相続の際に表面化することがあります。「縄伸び」の場合は、地積更正登記によって固定資産税が上がる可能性がある点に注意が必要です。
土地の取引や活用を考える際には、登記簿だけでなく、実際の土地の状態や測量の履歴を確認することが重要です。不安な点があれば、不動産鑑定士や土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。
【免責事項】
本記事は、一般社団法人不動産相談協会の動画内容を元にした情報提供を目的としており、特定の不動産取引や税務に関する助言を行うものではありません。個別の事案については、必ず専門家にご相談ください。
【出演専門家へのお問い合わせ】
動画に出演されている専門家へのお問い合わせは、こちらです
本日ご出演いただいた専門家(50音順)
●土地家屋調査士加野亮一先生
株式会社アドフィールド
TEL:045-442-8518
https://addfield.jimdofree.com/
●司法書士佐伯知哉先生
佐伯さえき司法書士事務所
TEL:042-851-7403
https://www.sss-office.jp/
https://www.youtube.com/@saekigymsho
●一級建築士佐々木順丈先生
株式会社輪設計
TEL:042-851-7268
https://rin-archi.co.jp/
●不動産鑑定士塚田貴洋先生
株式会社みなと鑑定
TEL:045-681-4120
http://www.minato-appraisal.co.jp/
●税理士福井紀之先生
福井税務会計事務所
TEL:042-739-5701
https://www.facc.jp/